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「リサ、なんで、逝っちゃったの?」

ユキは、まだ状況を判断しきれていないようだ。

混乱しているけれど、事実は重くのしかかる。

……『リサは、死んだ』……

ユキは、リサの家で、目を閉じて深い眠りについている、リサをじっとみつめていた。

なんだかよくわからないけれど、胸がいっぱいになって、リサの家を飛び出した。

 

事故現場で足を止めた。

本当はこんなところ、全速力で走って、すぐに通り過ぎてしまいたい。

だが、信号があるのだ。とても運がよくないかぎり、そんなこと不可能だ。

ふと、道路に落ちている手帳が目に入った。

するとなぜか、リサが頭に浮かんだ。

「リサのかもしれない。」

それは、黒っぽい手帳で、かなり厚かった。

「見ちゃったら、まずいかなあ」

なんていいながら、おそるおそる、開いてみた。

…このとき、手帳を開かなければ、自分が大変なことになっていたかもしれない。

そして、あの人と出会うこともなかっただろう。

 

手帳の1ページ目。書かれていた文字は、

 

「ユキ、待ってるからね。」

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事故発生。

それは、あっというまの出来事だったそうだ。

 

2人は、T字路で別れた。

右の道を進めば、ユキの家。

左の道を進めば、リサの家に着く。

ユキは、いつもどおり、家に帰った。

でも、リサは…。

 

本当に一瞬のできごとだったという。

リサが信号を渡っているとき、信号無視のダンプカーが轟音とともにやってきた。

リサは逃げようとしたけれど、なんていったって、大型車だ。

しかも、目撃者の証言によれば、かなりスピードがでていたそうだ。

そして………悲劇がおとずれた。

リサは、すぐに病院に搬送された。

意識は、もうなかったという。

でも、かろうじて生きていた。最初の10分ほどは。

ユキが病院にかけつけたのは、事故発生から20分ほど経っていた。

ユキがみたリサは、もう……二度と目を覚まさない、リサだった。

 

市原 理沙 永眠。

享年13歳。

 

リサの人生は、これで、「おわり」だった。

だが、ユキにとっては、これが「はじまり」だった。

「今日、一緒に帰らない?」

放課後。リサが、いつもどおりのセリフを大声で言う。

リサはいつもこう言うけれど、他の人と帰るつもりなんてないんだ。

だいたい、一緒に帰る人がユキしかいないのだ。

「ダメって言ったらどうする?」

こんな返事をかえすユキ。ちなみに、ユキは素直な子ではない。

これは、「いつもどおり一緒に帰ろう」、という合図。

放課後のテレパシーの後は、楽しいおしゃべりタイム。

遊ぶ約束、明日の予定うんぬん。

ありふれた会話だけれど、毎日聞く話はとても新鮮。

なぜなんだろう。

でも、そんなこと2人にはどうでもいいことだった。

 

でも、今考えれば、どうでもよくなんかなかったんだね。

放課後は、ユキにとって幸せな時間だった。

リサが、いなくなるまでは。

 

リサは、クラスの中では浮いているほうで、個性的な子だ。

1-Aには37人の人間がいるというのに、リサの周りだけ、不思議なオーラが漂っているような感じだ。

リサと仲良くしている人は少ない。というより、仲良くしようと考える人が少ないのかもしれない。

でも、ユキは違った。

ユキは平凡で、容姿も、成績も、物事の考え方も人並みだった。

だからこそ、ユキはリサのような人に憧れていたのかもしれない。

リサがユキを、求めていたのかもしれない。

どちらにしろ、いろいろなきっかけが重なって、2人は仲が良かった。

いつのまにか、同じペアで、同じグループで、同じ行動をしていた。

 

そして2人は、いつのまにか、世では親友と呼ばれる関係になっていた。

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